addsomemusic2006-07-29



 ニルソンのオリジナル・アルバムとして5枚目にあたるのが1971年にリリースされた『ニルソン・シュミルソン』。それ以前の4作品にはアルバムごとに変化は見せてきたものの、基本の部分が同じでどれも同趣向の色合いを見せてくれていました。でもこの『ニルソン・シュミルソン』からの変化はニルソン自身にとっても大きなものだったのでは?ロンドンで録音され、プロデュースにリチャード・ペリーを迎えています。バックを固める演奏陣も英国勢中心。ポップ職人といった趣きだった前4作に比べ、かなりロック色が濃くなっているのが1番の特徴かもしれませんね。


 ニルソンのアルバムで初めて聴いたのがこの『ニルソン・シュミルソン』だった・・・という方は多いんじゃないでしょうか?私もその一人なんですけどね。最初に手に取るくらいに認知された名盤。新しい試みがマーケティング的には吉とでたパターンですね。アルバムの質も高いけど、やはり「WITHOUT YOU」というヒット曲を収録してあることがかなり重要ですよね。


 「WITHOUT YOU」のヒットで2度目のグラミーを獲得します。前回の「うわさの男」と共にカバー曲での受賞ってのがニルソン自身にしてみれば歯がゆいところなんじゃないでしょうか。この「WITHOUT YOU」のオリジナルはビートルズの弟分バンドとして注目されていたバッドフィンガーによるもの。バンド・サウンドでニルソンのカバーとは全然タイプは違います。バッドフィンガーのオリジナルを聴くと、それはそれでなかなか良いんですが、どうしてもニルソンと比べちゃってボーカルの弱さを感じちゃうんだよなぁ。後にマライア・キャリーもカバーしてヒットしますが、これは明らかにニルソンのバージョンを下敷きにしたものでした。


 「WITHOUT YOU」のアルバムとして定着してしまった感は否めない『ニルソン・シュミルソン』なんですが、実際に通して聴いてみるとその「WITHOUT YOU」だけが突出して違和感を感じさせます。なんとも居心地が悪いんですよ。ハッキリいって「WITHOUT YOU」をカットしたほうがアルバムとしてのまとまりはすごく良いんですよねぇ。なんとも皮肉なもんです。


 個人的にはニルソンは初期の4作品を愛して止まないんですが、この中期へと突入していく『ニルソン・シュミルソン』もやはり名盤と呼ぶに相応しい内容かと思います。あまりに感傷的で大袈裟な歌いっぷりの「WITHOUT YOU」も素直に名曲だと思います(笑)。


 いま、アナログでなく輸入盤のCD聴いてるんですが、ここに収録されてるボーナス・トラックが本当に素晴らしい。アルバム収録曲のデモなんですが、これが生々しくってスゴイ。ピアノだけで歌われる「WITHOUT YOU」には完成品以上に胸を打った。